フラクタル次元のネットワーク成長ルール依存性

ポイント

  • 正方格子上に定義されるネットワーク成長模型におけるパーコレーション相転移の様相を、モンテカルロシミュレーションを用いて検討しました。
  • ネットワーク成長ルールを系統的に検討するため、ネットワーク成長ルールを特徴付けるパラメータを導入し、一般的なネットワーク成長ルールを構築しました。
  • ネットワーク成長が遅いルールになると、パーコレーション相転移点直上でのパーコレーションクラスタが滑らかになり、フラクタル次元が大きくなることが分かりました。

概要

電気を通さない球と電気を通す球を二種類用意し、それを一つの容器に入れることを考えましょう。 容器の端を電極でつなぎます。 電気を通す球がある程度以上の割合で入っていると電気が流れますが、それより低い割合で電気を通す球が入っている場合には電気が流れません。 これは、電気を通す球が電極の端と端をつなぐネットワークを形成しているか否か、という問題に帰着されます。 端と端をつなぐネットワークがある場合、そのクラスタをパーコレーションしたクラスタと呼びます。 このように、系全体を貫くクラスタがあるか否かが、要素の密度で変化する相転移をパーコレーション相転移と呼びます。 パーコレーション相転移は、水や超伝導、あるいは磁性体や誘電体などに見られる相転移現象と同様に精力的に研究されてきました。 パーコレーション相転移の性質、すなわち、系の次元と臨界指数の関係は多くの場合について知られています。

ネットワーク成長模型におけるパーコレーション転移は、現在もなお活発に研究がなされており、次々に新しい相転移の様相が見出されています。 例えば、2009年にAchlioptasらは"Explosive Percolation in Random Networks(ランダムネットワーク上における爆発的パーコレーション)"と題する論文を報告しています[A]。 通常の場合、パーコレーション転移は連続転移ですが、特殊なネットワーク成長ルールを課すと、パーコレーション転移が不連続転移になるという主張です。 不連続に物理量が変化するさまを"explosive(爆発的)"と表現しました。 その後、多くの研究者がこの"explosive percolation"に対し、様々なアプローチで研究を進めてきた。 中にはこの"explosive percolation"は実は連続転移だと主張する研究もあります。

そのような背景の中、我々は、ネットワーク成長ルールを変化させることにより、パーコレーション転移点直上におけるパーコレーションクラスタの形状がどのように変化するか、に興味を持ちました。 ネットワーク成長ルールを一般的に変化させる枠組みを構築するため、ネットワーク成長の速度を表現する一般化パラメータを導入しました。 Achlioptasらの導入したネットワーク成長ルールは、ネットワーク成長の速度が遅い場合に対応します。 また一般化パラメータを導入することにより、Achlioptasらの導入したネットワーク成長ルールと逆の場合についても検討することができました。 パーコレーションクラスタの粗さを表現する幾何学的パラメータ、及び、フラクタル次元の、ネットワーク成長速度依存性を検討しました。 その結果、ネットワーク成長の速度が速い場合には、パーコレーションクラスタの形状が滑らかになり、フラクタル次元が大きくなることが明らかになりました。

以上の研究成果に関する論文がJournal of the Physical Society of Japan誌に掲載されました[1]。本研究は田村亮博士(物質・材料研究機構)[link]との共同研究です。


本項目に関する我々の論文:
[1] Shu Tanaka and Ryo Tamura, J. Phys. Soc. Jpn. 82, 053002 (2013). [link]

References:
[A] D. Achlioptas, R. M. D'Souza, and J. Spencer, Science 323, 1453 (2009).